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僕は普段、政治系ニュースサイトの編集者として働いている。そのため、おそらく日本で3番目ぐらいに現職政治家のブログを読んでいる人間だと思う(1位と2位は、前編集長と現編集長)。人並み以上に政治関連ニュースをチェックしているし、一定以上の知識を持っているつもりだ。

当然、選挙に際しては、日々の業務で得た様々な情報を勘案して、最終的な投票先を決めている。

だがしかし、そうやって僕が得ている「政治家の情報」というのは、本当に妥当なものなのだろうか。ネットを含め、多方面から情報を得ているという自負はある。

それでも、新聞やテレビといったメディアが作り上げた「なにかやってくれそうな政治家」のイメージに引っ張られていないだろうか。マスメディアで連呼される著名候補の「政策っぽいキャッチフレーズ」で、判断していないだろうか――。

今年の開高健ノンフィクション賞受賞作「黙殺―報じられない”無頼系独立候補”たちの戦い」を読んでいると、そんな不安に駆られてしまう。

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撮影:畠山理仁

本書では、新聞やテレビでは取り上げない、いわゆる「泡沫候補」を徹底的に取材している。

泡沫候補と聞いて、多くの人がいの一番に思い浮かべるであろうマック赤坂氏については、まるまる一章をさいて、その奮闘振りを描写している。マック氏の繰り広げる選挙戦は、読めば読むほどバカバカしい(街頭で股間を露にしたこともあるというのだから恐れ入る)。

ただ、数百万の供託金を支払い、聴衆から冷たい視線や罵声を投げ掛けられながらも、愚直に選挙に挑む姿勢には思わず言葉を失う。

自分は、かつて彼ほどの熱量で「公」に対して、何かを思ったことはあっただろうか。彼が他の政治家より劣っていると断言できる明確な理由を自分は果たして持っているのだろうか。そんな風に考えさせられる。

「一人で戦っとんや。おまえにできるかそれが!」


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2012年12月に行われた衆議院総選挙にも出馬したマック赤坂は、選挙戦最終日に秋葉原を訪れる。秋葉原は、自民党が最終演説を行う場所として知られている。

そこでは、多くの自民党支持者が日の丸の小旗を握り、応援に駆けつけた安倍首相や麻生太郎元首相の演説に声援を送る。そうした状況にもマック赤坂は少しもひるまず立ち向かう。

当然、集まった聴衆からは「マックやめろ!」「マック帰れ!」の怒号が飛ぶ。1万人のブーイングが向けられる先は、マック赤坂ただ一人だ。

このとき、映画のカメラはもう一人の男をとらえていた。マックの息子である健太郎だ。健太郎は人波の匿名性に隠れてやじを飛ばし続ける聴衆に向かい、思わず叫んでいた。

「お前が何かいうことあるんだったら、ここ(街宣車:筆者注)乗ってやれよ!」

(中略)

「一人で戦っとねん、一人で戦っとって何が悪い?」

「一人で戦っとんや。おまえにできるかそれが!」

僕には出来ない。

時にニュースで政治家の失言や不祥事を見て、不遜ながら「こんな風になるのであれば、俺がやったほうがマシ」と思うことがある。だが、それは絶対に無理なのだろう。

本書に登場するような、多くの有権者に存在すら知られることなく、供託金で数十万、数百万を失っていく候補者達を見て、僕はその思いを強くする。僕は決して彼らのようになれない、と。

著者である畠山さんは、彼らの戦いを間近で見守りながらも、一定の距離感で突き放す。時に奇抜で突拍子もない主張を訴える候補者に、誰もが思うであろう突っ込みを入れる。ただ、どんなに勝算が薄くとも選挙という戦いに挑む候補者へのリスペクトが感じられる。

僕らが普段何気なく語っている「政治家」。知っているつもりなっている「選挙」。その裏にある有益ではないかもしれないが、圧倒的な熱量をもった物語を感じられるのが、本書だ。

政治に興味のない人は、面白人物列伝として楽しめるかもしれない。だが、なんとなく「選挙や政治なんてこんなものだ」と思っている人にこそ読んで欲しい。多分僕らは、選挙で起きていることの半分も知らない。

後書きに自分の名前を見つけてびっくり

最後に蛇足かつ情報開示をしておくと、本書の一部には僕が依頼し、実際にニュースサイトに掲載された原稿を加筆・修正したものが含まれている。本書が開高健ノンフィクション賞という名誉ある賞を受賞したこと、おこがましいかもしれないが、そうした書籍の誕生に微力ながらでも関われたことを、とても嬉しく思う。

畠山さん、改めて本当におめでとうございます。後書きで触れて頂き、ありがとうございました。知らずに読み進めて、びっくりしました(笑)。

黙殺 報じられない“無頼系独立候補
畠山 理仁
集英社
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