芸能人が幼少期を描いたベストセラーといえば、麒麟の田村の「ホームレス中学生 」や、島田洋七の「佐賀のがばいばあちゃん 」といったところが、頭に浮かびますが、俳優である風間トオル作の本書「ビンボー魂」はちょっとレベルが違います。

離婚、一家離散、保護者である祖父の認知症・・・


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風間トオルさんは幼くして両親が離婚。父方の祖父母と共に暮らすことになるも、父親も新たに付き合うことになった女性と共に暮らすために、風間さんから離れていったそうです。

ここまででもかなり厳しい状況だと思うのですが、さらに風間さんが小学生低学年の頃には祖父が認知症になったというのです。しかも、その病状が筆舌につくしがたい。。。

祖父の場合、徘徊しながら排便をして、便を人の家の壁に塗りたくるというのがお決まりのパターンで、どうやら近所でも有名だったようです。

僕はいつも、友達と別れたからバケツを持って急いで祖父のところへ戻り、人に見られないように物影に隠れながら出たり入ったりを繰り返して壁を洗い、祖父を連れて帰っていたのです。

「カマキリ=デリバリーピザ」


こうした厳しい環境に置かれた幼少期の風間さんは、いつもお腹をすかしており、それこそ公園の草花などを食べて飢えをしのいでいたそうです。

カマキリを口にしたこともあるというのですが、そうするに至った思考の経緯を聞くと、どういうリアクションをとるべきなのかわからなくなります。僕は思わず一瞬笑ってしまいましたが、よく考えなくてもまったく笑えない話です。。。
しかも草花は外へ収穫しにいかなければいけない食べ物であるのに比べ、カマキリはアパートの部屋に来てくれた。いってみればデリバリーピザのようなもので、なんとなく緑色でカルシウム豊富な感じもするし、これが美味だったら最高だと思ったわけです。

同情を誘おうとするでも、現在に至るまでのステップアップを誇るでもなく、ただ淡々と過去の己の困窮振りをシンプルに語る様子には畏怖の念すら覚えます。

読み物としての面白さも抜群で、上記のように思わず噴き出してしまうシーンもあるのですが、次の瞬間には、そのあまりの惨状に思いをいたし、笑えなくなる。。そんな一風変わった読書体験をもたらしてくれます。

風間さんも本書の中で、「貧乏だった当時を笑い話にすることで、思い出として昇華できる」といった趣旨のことを書いていますので、何も考えず笑い飛ばせばいいのかもしれません。ただ、そう思って実際に本書を手にとって読みはじめると、まったく笑えないレベルの貧困が描かれているので、読む前にそれなりに覚悟が必要な一冊だと思います。

ビンボー魂 おばあちゃんが遺してくれた生き抜く力
風間 トオル
中央公論新社
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