「パチンコ台のロイヤリティ500万」「CMへの文章と直筆の文字使用で500万」「企業の周年記念のための小説執筆料、1作1000万円」………。

印税、原稿料にとどまらず、作品やそれに付随する業務で稼ぐことができるお金を包み隠さず教えてくれるのが、小説家・ 森博嗣さんの「作家の収支」です。

編集者としては、他媒体、他業界がどの程度ギャラを支払っているのか、というのは非常に気になるところです。著者である森さんは、そんなゲスな興味に余すことなく答えてくれます。
文庫の解説は、その一文に対して普通は10万円程度の原稿料が設定されている。
小説がドラマになる場合、1時間の放映に対して50万円ぐらいの額である。
森さんは、代表作のひとつである「すべてがFになる 」がゲーム、ドラマ、アニメと様々なメディアで展開されているので、ギャラのもらい方も多彩です。それぞれのメディア展開時のロイヤリティなどもかなり詳細に記載されているので、“業界の相場観”をおおまかに理解することができます。

例えば、NHKの出演料なんかも、明らかにしてくれます。
NHKが趣味人の番組を作るというので、その初回に取り上げられた。このときは3人のスタッフ(ディレクタ、 カメラマン、音声担当)が取材に来て1カ月ほどの期間、何日も時間かけて収録した。出演料は50万円だった。
さらに、世の多くのプロブロガー見たら、ゲンナリするようなことも教えてくれるのです。
このブログの連載だけで、1年間の原稿料は540万円、4冊の本の印税で約400万円。つまり、トータルで年収940円になる。1日15分の仕事でこれだけ稼げたのだ。
お金という非常に生っぽい話をしているわけですが、森さんの筆致は非常に淡々としていて、まったく嫌味に感じません。むしろ、詳細に様々な企画にかかる料金を明らかにしていくさまは爽快ですらあります。

「仕事という行為は、例外なく守銭奴になることだ」


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また、森さん独自の出版業界観、仕事観なども明らかにされているのですが、その多くがかなり的確なものだと感じました。森さんは電子書籍の隆盛を早い段階から予測していたことが伺えますし、実際の数字などを示しながら、マーケティング活動としてのサイン会の非効率性を指摘したりします。

そして、本の終盤で以下のように語るのです。
守銭奴のような物言いになるけれど、これは正直なところである。仕事という行為は、例外なく守銭奴になることだ。
全編にわたって、終始カネの話をして来た後で、この台詞。カイジで利根川が言う「金は命より重い……!そこの認識をごまかす輩は生涯地を這う……!」に匹敵するものがあります。

何かと夢や憧れで語られがちな出版・作家の世界ですが、こういう身もふたもないお金の話は、どこかで一度読んでおくべきでしょう。もちろん、既に業界の中にいる人にとってもニヤニヤしながら楽しめる内容でした。

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