先週の金曜日、青山ブックセンターで行われた「山本一郎・中川淳一郎・漆原直行トークイベント」に行ってきました。

チケット

トークのテーマは登壇したお三方が関わってらっしゃる「デイリーニュースオンライン」で、どんな内容の記事が受けているのか、というもの。自分の業務内容ど真ん中で、知ってる人、メディア、読んだ記事の話題がバンバン出てくる展開で、2時間半笑いっぱなしでした。

許されるならすべてを文字起こしをしたいぐらいなのですが、僕が最も響いたのはウェブメディア運営の根源的な話でした。

ウェブメディアの名言「コソボは独立しなかった」


「コソボは独立しなかった」。これはウェブメディアにおいて、「一般的に重要と考えられる国際関係のニュースが如何に読まれないか」を表現した言葉です。

2008年の「コソボ独立」というのは世界的には大ニュースです。CNNやBBCのトップは、この話題で持ち切り。日本のネットメディア界でもっとも公共性が高いであろうYahooニュースでも、この話題をとりあげました。しかし、芸能ニュースに圧されて、「コソボ独立」のニュースはほとんど読まれなかったというのです。
海外ニュースがいかに読まれないかとの例で、「ヤフーニュースでは、コソボは独立しなかった」と社内では言っ ているのだという。コソボの独立は2008年の2月。独立の日、一番読まれた記事はお笑いのR-1ぐらんぷりで「なだぎ武が2連覇」だった。コソボ独立記 事のアクセス数はR-1ぐらんぷり記事の50分の1だった。

それから8年、Web上ではイランとサウジが友好関係を保っていた・・・


イベント中に中川さんも冗談めかして、言うのです。

「僕だって本当は『企業の成長戦略!』みたいな記事を読んでもらいたい。でも、『ベッキーの下半身事情』みたいなものの方が読まれる。僕はこの状態を変えたい!と野々村議員ばりに思っている」と。

しかし現実は厳しく、圧倒的にPVを取るのはベッキーの不倫報道。その破壊力を山本さんは「年始に小保方さんが3人まとめてやってきた」と表現します。

また、ベッキーに関する報道が出る前に注目を集めていたのは、フィギュアスケーター羽生結弦の交際疑惑。そのPVはイランとサウジアラビアの国交断絶の60倍のアクセスがあったそうです。こうした事実をもって「ウェブメディアの世界ではイランとサウジアラビアは仲良しだね」と冗談を飛ばす現実が、8年経った現在でも続いているのです。

我々はゲスな欲望からは逃れられない。だがしかし・・・


我々は認めねばなりません。ジャーナリズムだなんだと如何に虚勢を張ったところで、ウェブメディア周辺には下衆な欲望が渦巻いており、それに応えざるを得ない現状があるということを。ここを認めなければ、前に進むことは出来ません。

下衆な探究心に応え続けた先に何があるのか。その先を行くために、どんな記事を作るべきなのか。そのことを、今後ウェブメディアに携わる人たちは考えなければいけないでしょう。一見下衆なように見えながらも深い示唆にとんだ記事はどのようにすれば作れるのか。どんな伝え方であれば、下衆な記事以上の興味を読者に持ってもらえるのか。そうした試行錯誤が必要だと改めて考えさせられました。

また、2月4日に阿佐ヶ谷ロフトで同じメンバーによる今回のイベントの続編が行われるそうです。そこでは今回の議論をふまえて、もう少し知的なテーマに切り込んで行くとのことなので、次回も足を運ぼうと考えています。

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