ルポ

タイトルにインパクトがありすぎて、手に取らずにはおれませんでした。まず、最初に出てくる数字に驚かされます。
国立社会保障人口問題研究所「第14回出生動向基本調査」(2010年)によると、20〜24歳の未婚男性で性交経験がない人は40.5%と前回(2005年)に比べ6.9ポイント上昇。さらには30〜34歳の未婚男性のうち、性交経験がない人の割合は26.1%となっている。おおよそ、4人に1人以上が童貞という計算だ。

この数値を元に計算すると、30歳以上の未婚男性はおおよそ800万人、全国に209万人の中年童貞がいることになる。これは長野県の総人口と、ほぼ同数だ。「出生動向基本調査」は5年ごとの調査で、性交経験のない男性はここ20年の間、上昇し続けている。

この手の非常にパーソナルな質問に関する統計がどこまで正しいのか、という疑問はありますが、4人に1人って結構な人数ですよね。それぐらいの規模になるとある種の「社会問題」的な捉え方をしても良いのかもしれません。

とはいえ、この本は著者である中村淳彦さんの非常に個人的な経験がきっかけとなって書かれたものなのです。そして、それは中村さんが運営する介護施設が、コミュニケーション能力の低い「中年童貞」によってメチャクチャにされたというもの。

こうした個人的な経験を基に書かれたルポなので、 幻冬舎plusで公開即日大炎上したと聞いても「さもありなん」としか思えません。全体としても統計的な裏付けなどより著者の主観に基づく印象論が多くなっています。

これ読んで胸が締め付けられない男っているの?


前述の通り、印象論的な記述も多いので、いわゆるオタクやネトウヨなどステレオタイプな童貞が「中年童貞」として取り上げられています。ただ、趣味志向や思想の中身はともかく、本書の中で登場する「中年童貞」が女性に絶望し、自らの世界に没入するきっかけというのは、本当に“ちょっとしたこと”だったりするんです。

何かの拍子に自分のコンプレックスを激しく刺激されて、そこからもう次の一歩を踏み出せなくなってしまう。そういう誰にでも起こりうるようなことを契機に、「中年童貞」となってしまった方のエピソードを読んでいると、自分にもまかり間違えばこういう未来があったのかもしれないと思ってしまうんですよね。そういう意味では身につまされます。

その一方で、まったく理解できない思考をする方々も登場します。婚活パーティーの主催者に、参加者の「中年童貞」について聞くと、以下のような答えが返ってくるのです。
我々は人を集めて、パーティーを主催するだけでなくて、お客様をカウンセリングしてマッチングするように努力している。

申し込みのあったお客さんにどのような出会いを求めているかを聞くけど、女性経験の少ない男性ほど“恋人にするなら25歳以下で、処女でモー娘。時代の安倍なつみに似ている感じ”とか、“20歳前後で可愛くて、処女の女性”とか現実離れしたことを平気で言う。

処女にこだわる人というのはネットの世界で見かけることはありましたが、あくまでネタで実在するとは思っておりませんでした。

社会問題を扱った本として読むには雑な印象を受けますが、ルポタージュとしての完成度は高く、一気に読ませる力がありました。「中年童貞」のAV男優・鈴鹿イチローのエピソードなんかは号泣必至です。これ読んで少しもウルっと来ない男性は、女性コンプレックスとは無縁のヤリちんだけでしょうね。

ちなみに言わずもがなですが、エントリタイトルは「世界の中心で愛を叫ぶ」の帯から取ってます。