saraba
直木賞受賞作で2015年本屋大賞にノミネートされた西加奈子さんの長編小説。エキセントリックな姉を持ち、不安定な家庭で育った主人公・圷歩(あくつあゆむ)の成長がイラン、エジプト、大阪と舞台を変えながら鮮やかな筆致で描かれています。

「あなたが信じるものを、誰かにきめさせてはいけないわ。」


最終章のタイトルにもなっている、この台詞。

「あなたが信じるものを、誰かにきめさせてはいけないわ。」

これがヤバいんですよ。もし僕が中学生ぐらいの時に、この小説を読んでいたら、友達に相談を受けた時なんかに、得意面して言っていたことでしょう。思春期の少年少女の人生を変えかねない力がある。

気の強い母親と過激な行動を繰り返す姉に翻弄され続けた主人公の歩は、常に自分が「周囲からどう見られているか」を気にしながら生きて行くことになります。そのことを象徴するエピソードを随所にちりばめて、後半に様々な伏線をダダダッと音が出そうな勢いで回収して、一気にラストまで読み切らせる。そして、さわやかでありながら深く考え込んでしまうような読後感が残る。文句無しの面白さでした。

主人公の歩の自意識が痛々しすぎる


僕はこの小説のテーマは「自意識からの解放」だと思いました。

思春期には誰もが必要以上の自意識に苦しめられます。どんな人にも思い出すと、枕に顔を埋めて足をバタバタさせたくなるような黒歴史があるでしょう。こうした黒歴史は、過度に「自分が誰かに見られている」と思いこむことによって生まれていると思うのです。

こうした思い込みをいち早く捨てて、「周囲の誰がなんと思おうと自分は自分のやりたいことをやるんだ」「誰も自分のことなんか気にしちゃいない」と思えるようになること。それは大人になる上で、最も重要な要素の一つなのではないでしょうか。

作中、丁寧に丁寧に描かれる歩の自意識は30過ぎのおっさんの胸にも突き刺さります。特に中学時代編とかヤバいです。

僕はもちろん、有島の「一緒に帰りたい」に喜んだのではなかった。「みんながうらやましそうに見てい」ることを、喜んだのだった。

嫌な奴だと蔑まれても構わない。思春期の男子なんてそんなものだと、僕ははっきり断言しよう。
上巻・320ページ

どうですか。この痛々しいながら、どこか共感せざる得ない自意識!!。自意識をいびつな形でしか表現できない姉と共に歩がどう成長して行くのかが気になって仕方なくなる作品。オススメです。

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