最近では、すっかり野球派の僕ですが、かつてはヨーロッパサッカーに熱を上げていた時代もありました。なかでも僕が好きだったのは現在本田圭佑が所属しているACミラン。

今では監督を務めているインザーギがエースを務め、ガットゥーゾのような個性的な選手が中盤にいて、ベテラン・マルディーニがDFラインに君臨する、とても魅力的なチームでした。

そんなミランを10年以上、裏側から支えて来た日本人がいるというのです。その名も遠藤友則。凄腕トレーナーとして多くの名選手から信頼も集めて来た遠藤氏の軌跡を描いたのが本書「ミランの手」です。

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改めて考えさせられる“フィジカル”の必要性


“フィジカル”って割とナチュラルに報道などで目にする訳ですが、意外とふんわりした概念だと思うんですよね。“フィジカルコンディション”と一口に言って、それがどのようなメカニズムで維持されているのか、キチンと理解している人は少ないのではないでしょうか。

本書では、「筋トレのし過ぎでコンディションを崩すとはどのようなことか」「監督のトレーニング方針によりコンディションを崩す選手がいるのは何故か」といった疑問に対する回答が、遠藤氏の経験などを通して描かれています。

また、西洋医学が主流の欧州のクラブチームの中にあって、東洋医学がなかなか理解されづらい現状や、そうした中で遠藤氏がどのようにチームの信頼を勝ち得てきたかといったエピソードも描かれており、非常に興味深いないようになっています。

トップレベルの選手でもモチベーションが“モテたい”の場合も…


個人的に面白かったのは、トップレベルの選手であってもサッカーを外してしまえば、ただの若者だというエピソード。遠藤氏は、コンディションを維持するために、試合に出場しない選手たちに脂肪燃焼を促すメニューを消化させる必要があるのですが、これがなかなか難しい。プライドを傷つけず、上手にダイエットさせるためには、理論ではなく彼らの感情に訴えかけるのです。

「彼女いないの?そんなデブじゃ彼女も見つからないよな・それにオフにビーチに行って女の子を誘っても、そんな身体じゃ見向きもされないよ。まあ、札束を身体に貼り付けておけば別だけどね」

ここで遠藤は、Tシャツの上からややこんもりしたお腹をさすりつつ、「俺は、女房も子供もいるから、これで充分だけどね」。そして最後に、「これからオフに備えてはじめてみたらどう?」と明るく誘ってみる。

すると、それまで消極的だった選手が、意外にも「その日から腹筋のトレーニングを始めてしまうんです。しかも、これがその辺にある同好会やサークルのサッカークラブではなく、世界のトップクラスの選手ですから、余計に面白いでしょ。」

このように、スタープレーヤーたちの人間味に溢れたエピソードを紹介しつつ、トレーナーという仕事の重要性が語られた良書だと思います。従来のスポーツノンフィクションとは一線を画した深い内容になっていると思うので、サッカーファンは是非手に取ってみてください。

ミランの手 ACミランメディカルトレーナー遠藤友則
小松孝
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