安田峰俊さんの新刊、読みました。


なぜ女子大生は「無国籍者」となったのか? なぜ軍閥高官の孫は夜の街の住人となったのか? 国家という枠組みを取り払った場所で生きる人たちが、本当に大切にしているものは何か。彼らから見た日本とは――。

KADOKAWA


難民、ウイグル、台湾…。本作は、いわゆる「近代国家」の枠組みからはじき出され、“境界”に立つ人々の姿をおったノンフィクションです。

「自分自身が○○人である」という誰もが当たり前のように持っているアイデンティティを喪失した人々の苦悩が丁寧に描かれて…というような作品をイメージしたのですが、実際はそうした過剰なウェットさを排除した作品になってました。
僕自身は、「難民」というとグーグルアドセンスで表示される「緊急事態」みたいなバナーとその中で不安な顔をする子供がパッと思い浮かんでしまいます。しかし、本作で描かれている“難民”の方々は、周囲からのステレオタイプな偏見に悩まされることがありながらも、団地に住んで、当たり前のように学校に通い、Yahoo知恵袋で質問したりするような本当に“普通”の人々でした。

そして、筆者は言うのです、必要以上に「かわいそう」だと思ったり、弱者扱いして食い物にするなんてのは、“多数派の傲慢”じゃないのと。

特筆すべきは筆者の政治的“フラットさ”

境界
この作品では、筆者のこうしたある種“ドライ”な視線が徹底されています。国際政治のパワーバランスに言及する際も決して特定の思想や立場を取らないよう細心の注意が払われているのです。それでも、筆者が特定の立場に共感を示しそうになった場合には、そうした懊悩すらも読者にそのまま提示します。

例えば、第2、3章では、ウイグルについて詳細かつ衝撃的なレポートがなされています。

中国からの弾圧を世界に訴え、国際社会からの支援を受けるために「世界ウイグル会議」という組織がつくられているのですが、日本にも同団体のホスト役を務めた「日本ウイグル協会」という組織があるのです。筆者は、詳細な取材によって、こうした団体の活動が、国際社会の共感を得て、ウイグルの立場を強化することに資するものではないことを明らかにして行きます。

これは「日本ウイグル協会」が事実上、日本の特定の政治団体に支配されていることに由来する部分も大きいのですが、筆者はそのこと自体を大上段から批判することはありません。ある種、冷徹に現状の日本とウイグルの間で関係が両者にとって不幸せなものであることを淡々と指摘するのです。

このように、特定の立場に依拠しない、本来的な意味での“ルポ”に徹しているところも含めて、面白く、“新たな知識”を得ることができるノンフィクションに仕上がっていると思います。

前も言いましたが安田作品は「和僑」もお薦めですよ。

和僑    農民、やくざ、風俗嬢。中国の夕闇に住む日本人
安田 峰俊
角川書店(角川グループパブリッシング)
売り上げランキング: 73,887

ところで、日刊ゲンダイに掲載されたインタビューも拝見したのですが、安田さん少し太りましたかね??

日刊ゲンダイ|「境界の民」安田峰俊氏日刊ゲンダイ|「境界の民」安田峰俊氏