自分は、一応2人の子どもの父親をやっているのですが、「どのような教育が子どもにとっていいの?」というのは悩みの種です。育児や教育というのは、親にとっても初めての経験がほとんですから、何が正しいのかはよくわかりません。判断の基準もレンジも難しいですし。

なので、育児本を参考にしようと思って書店や図書館を覗いてみても、選ぶのがまた難しい。個人の体験を記しただけで科学的根拠が薄いもの(読み物として面白ければいいのかもしれませんが)やトンデモ本も多い分野なので、どれを選ぶべきか悩んでしまいます。

「なるべく科学的根拠のある本を…」ということで、これを選びました。



この本はアメリカ人のジャーナリストが、心理学、経済学、神経科学などの最新の科学研究の結果を紹介しながら、「何が子どもにとって長期的によい影響を及ぼすのか」ということを探っていきます。ノーベル賞を受賞した労働経済学者のヘックマンやTED動画で有名なマシュマロの実験(子どもの自制心と将来の社会的成果の関係を調べる実験らしい)なんかも紹介されています。



超当たり前だけど「親の愛情」は重要


子どもとの関係を考える上で、愛情が重要なんて話は今更かと思いますが、この本の中では面白い実験が紹介されています。

処置のあとに、子ラットをケージに戻すと、一部の母ラットは、子に駆け寄り、数分かけてなめたり毛づくろいをしたりする。一方、無視してやり過ごす母ラットもいる。子ラットを検査してみると、一見なんとういうことのないこの行為にはじつにめざましい心理的効果があるとわかった。

母ラットが子ラットの毛づくろいをしてやると、子ラットのストレスホルモンの波がひくそうです。そこに注目した研究者は、毛づくろいをしてもらったラットとしてもらえなかったラットを分けて観察したところ、毛づくろいをしてもらっていたラットの方がより社会性があり、好奇心も強く、攻撃性が低いというのです。

闇雲に「親の愛情が大事」と言われるよりも、こうした実験結果を示されるとなるほどと思わされるものがありました。ちなみに、これは必ずしも“実の親”に限ったことではないそうです。(望ましいの言うまでもありません)

学力よりも「性格・気質」はもっと重要


上記のような研究結果を紹介しながら、本書では子どもが社会的成功をおさめる可能性を高めるために、以下の7つの気質・性格が重要になると指摘します。

・やり抜く力
・自制心
・意欲
・社会的知性
・感謝の気持ち
・オプティミズム(楽観主義)
・好奇心

こうした研究結果に基づき、アメリカの一部の学校では、「性格の通知表」を渡しているところもあったりするそうです。しかも、この気質を身につけるのに“遅すぎる”ことはなく、幼少期に身につけられなくても訓練次第で、その後の成長段階で挽回できることも指摘されています。もちろん遅れた分、労力は余計にかかるそうですが。

◆◆◆

a1180_014650
この本の面白いところは、上記したような様々な研究結果が数多く紹介されていることです。冒頭でも書きましたが「教育」というと何だか感情的、情緒的な議論になりがちだと思うんですよね。「道徳が…」「日教組が…」「戦後教育が…」みたいな。

そういうの心の底からどうでもいいので、せめてこの本の中で挙げられているような様々な研究結果を踏まえて、教育問題は議論してほしいなと思います。