病院

年代ごとに、「飲み会のトークテーマ」って変わりますよね。
20代前半なら恋愛がメインテーマでしょうし、20代後半になると、そこに結婚が絡んでくる。「あいつ○○とつき合ってるらしいぜ」とか「○○は今度結婚するらしいぞ」みたいな話で盛り上がるもんです。

30代になると、引き続き結婚が需要なテーマでありつつも、そこに育児や一周回って離婚なんていうトピックスが加わってきます。そして、ぼちぼち自身の健康や病気の話も入ってきますが、多くの人たちが、この段階でもなかなかリアリティを持てないトピックスがあります。それは親の介護です。

介護の負担は、想像を絶する




この本は、作者の川口有美子さんが、ALS(筋萎縮性側索硬化症)という難病に掛かった母親を10数年に渡って介護した際の記録で、「第41回大宅壮一ノンフィクション賞受賞作」を受賞しています。

ALSは、筋肉の萎縮と筋力低下をきたす神経変性の病気で、半数ほどが発症後3年から5年で呼吸筋麻痺により死亡するそうです。最近では徳洲会事件で注目を集めた徳田虎雄氏の姿を思い浮かべる方も多いと思います。下の動画のように、身体が動かなくなると眼球の動きで専用の文字盤を指して、コミュニケーションを取ることになります。



本書で描かれる、川口氏による介護記録なのですが、「悲惨」の一言に尽きます。
彼女は、32歳という若さで、当時の夫の赴任先であるロンドンから、介護のための帰国を余儀なくされます。
介護という作業の負担は、一つの家族をバラバラにするのに充分な力があります。
妻の病を受け入れられずに現実から背を向けてしまう自分の父親や、満足なコミュニケーションをとれない母親の介護負担の中で苦しむ作者。

「こんなに辛いのに、何故尊厳死が許されないのか」という思いがよぎる中で、川口さんはどんな結論を出しのたのでしょうか。その結末は、是非実際に著書を読んで確かめてみてほしいと思います。

「寝たきりになるぐらいなら死んだ方がマシ」って思います??


僕は、正直、自分の両親が同じ状況に置かれたら、この本のような対応ができる自信はありません。経済的にも体力的にも相当厳しいでしょう。

あるいは自分自身が寝たきりになったら、どうでしょう?きっと楽しみなんて何もないでしょうし、死んだ方がマシだと思うかもしれません。でも、当たり前ですけど、寝たきりになった人にも楽しいことがあるんです。そんな当然のことをこの本は教えてくれます。

そして、思いました。自分が歳をとり、寝たきりで家族に迷惑をかけている自覚もある。そんな時に「自分の息子が結婚し、もうすぐ子どもができる」と聞いたら、どうなるか。個人的なワガママだったとしても、自分はきっと「孫の顔を見るまでは生きていたい」と思うでしょう。「生きていても負担になるだけだから、潔く死を選ぼう」なんてかっこいいことは思わないでしょうし、元気な時に、そんなことを言う人間を僕は信用しません。

政治の世界では、「尊厳死の法制化」をはかる動きがあります。自分の両親の最期、自分の最期をイメージし始める30代になったら、この本は読んでおいて損はないと思います。